大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(ナ)30号 判決

原告 日高升

被告 東京都選挙管理委員会

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告は、昭和二十六年四月二十三日執行の東京都港区会議員選挙を無効とする。訴訟費用は被告の負担とする、との判決を求めると申し立て、その請求の原因として(一)昭和二十六年四月二十四日東京都港区赤坂表町三丁目三十七番地同区赤坂支所に設けられた本件選挙赤坂開票所、同区麻布鳥居坂三番地同区麻布支所に設けられた本件選挙麻布開票所、及び同区芝公園六号地港区役所に設けられた本件選挙芝開票所において、開票事務を執行中開票事務に関係のない同区赤坂一ツ木町二番地中西敏二(現職東京都議会議員)が同開票所に不法入場し、十分又は数分間同所内を横行徘徊し、開票点検中の投票又は投票束に手を触れ、被選挙人の氏名と得票数とを認知し、赤坂開票所においては、大声で「湯川の当選確実だ」と告げて所外に立去つたとき、開票所の責任者は、入場制止、退出命令その他何ら適法な所置をとらず、放任し、またこれを故意に黙認したことがある。右中西敏二の行為は公職選挙法第二百二十八条に該当する犯罪行為であり、また第七十四条により準用せられる第五十八条ないし六十条の規定に違反し、開票管理者は同法第五十九条及び第六十条の処置をとらなかつたのであるから、これ等の行為は選挙の規定に違反し選挙の自由公正を害するものである。(二)右赤坂、麻布及び芝の開票所はその施設が頗る不完全であつた。即ち赤坂開票所は出入口が押し開きの扉で、かぎを施してなかつた、又関係者以外の者の不法入場を制止する守衛等を配置していなかつた、麻布開票所は出入口に扉がなく、衝立、繩張りなどその他何らの設備なく、不法入場を制止する守衛等の配置がなかつた。芝開票所は出入口は引戸式の扉で、選挙事務関係者以外絶対出入禁止の貼札があり、屈強な守衛二名を配置し、関係者の出入の時以外は閉鎖してあつたが、なお前開票所と同様中西敏二が容易に入場し得る事実から見れば、その設備は放慢不完全であつた。かくの如きは秘密投票主義の原則の下に公正に執行せらるべき選挙の自由公正を害する設備といわなければならない。従つて右設備の下に行われた本件選挙は選挙の規定に違反するものである。以上の理由により本件選挙を無効としあらためて選挙を行つた場合は現実に生じている結果と異る結果を生ずる可能性が十分であるから、選挙の結果に異動を及ぼす虞ある場合に該当し本件選挙を全部無効とせらるべきものである、と陳述した。

被告は、原告の請求を棄却する、との判決を求め、答弁として中西敏二が赤坂、麻布及び芝の開票所に入場したことはあるが、その時間は短時間であり開票中の投票に手を触れた事実、開票所の係員が同人を退去させるため、適当な措置をとらなかつたとの事実及び開票所の設備の点は全部否認すると述べた。

三、理  由

(一)  本件選挙の開票所に出入する権限のない中西敏二が開票所に入場し、原告主張のような行為があり、又開票管理者が公職選挙法第五十九条及び第六十条の処置をとらなかつたとしても、本件選挙の結果に何等影響を及ぼしたものとは認められない。(二) 本件選挙の開票所の設備が原告主張のような点においてその設備に欠けるところがあつたとしても、選挙の自由公正を害し選挙の結果に影響があつたものと認められない。従つて、本件選挙は選挙の規定に違反するところがあつたとしても選挙の結果に影響を及ぼす虞のない場合であるから選挙を無効とすべきものではなく、原告の請求は理由がない。よつて訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 藤江忠二郎 山口嘉夫 猪俣幸一)

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